

LUNAとは
Universal-Auduio ApolloとMacコンピュータの組み合わせでのみ使用でき、最高のサウンドクオリティを持つUAD-2プラグインと、ほぼリアルタイムでのかけ録りトラッキングが売りのDAWです。
5年間にわたるWindows10とApollo Twin USBでの宅録から一念発起し、Mac×Apollo x6環境に移行した私が、 メインDAWを乗り換えるか否かを試した感想を書いていきます。
現在の自宅DTM環境はこちら

- Apple Macbook Air 2020(M1) 8GB RAM/512GB SSD
- UA Apollo x6
- メインDAW Avid ProTools 2021.3.1
- YAMAHA MSP3ペア
M1 Macを核に、OWC Thunderbolt HubでUA Apollo x6を接続。
- UAD-2
- Waves V9〜V12
- Ik Multimedia T-RackS 5
- Native Instruments KONTAKT5
をインストールしています。いずれもM1正式サポートはされていませんが、特に問題なく使えてますよ!
見た目
私のPCは、13インチのMacbook Air。
ディスプレイサイズが大きくないので、画面UIに無理矢理感が出ることは否めませんが、これはProToolsの方が凄い。(笑)
ちなみに、LogicはMacbookでも見やすいです。流石Apple純正ですね。
とはいえ、13インチMacの時点でこの窮屈さは想像できますよね。
Windows時代にはデュアルディスプレイを使っていたので、Macでも同じことをしようと考えています。(M1 Macは、技術的仕様として最大2画面にしか出力できないので注意です!)
アクセシビリティ
「欲しい機能にすぐアクセスできるか」という観点です。
まぁ、慣れればどちらも同じくらい良好かなぁ
という印象……
LUNAの最もわかりやすいアクセシビリティ的欠点は、「日本語化できないこと」
再生や録音状態等はどのDAWでもほぼ共通ですし、「INSERT」や「SEND」くらいの単語はDAW使いであれば誰でもわかりますから、日本語化が必須というわけではありません。
しかし、気軽に作曲をしたい、という気分の時にずらっとアルファベットが並ぶのはややストレスではあります笑

DAW自体と、ターゲットとなるトラックを録音待機状態にして再生すると、録音。
パンポット、フェーダーで調整。インサート、センド。クリックのオンオフ、クオンタイズ(自動も可能)……
これらの機能に関しては、他のDAWと遜色ありません。
Abelton LiveやLogicとはやや方向性が違い、MTR(マルチトラックレコーダー)として進化してきたProToolsに近い設計思想を感じます。
ミックスウインドウの使いやすさ
上の項目にてProToolsを「MTR的なDAW」と書きましたが、LUNAはRecording Systemと銘打たれています。
その名の通り、テープマシンとコンソールに見られるような機能が取り入れられています。
わかりやすいのが、「UTILITY」セクションに存在する「TRIM」コントロールとそれに続く「TAPE」セクション、そしてその次に配置された「INSERTS」等の存在。
インラインのアナログコンソールに存在する「TRIM」と全く同じ役割を果たします。
PC内にアナログ卓
どういうことかと言いますと、
言わずと知れたSSL4000を始めとしたハイエンドコンソールには、
- マイクからテープマシンへ音を送るアンプ
- テープマシンからフェーダー部を通り、マスターフェーダーへ音を送るアンプ
の二つインプットがあり、それぞれゲインを調節できます。
LUNAでは、これらを
- 「UTILITY」の「TRIM」
- 各インサートの「INPUT」や「GAIN」など
として同じように扱えます。

これらのゲイン量を変えていくことで、「TRIM」を使ってテープマシンへの入力を増幅して強いコンプ感を得たり、Neve 33609などスレッショルドの設定値に特徴のあるものを入れる際のゲインステージングを最適化したりできます。
かなりマニアックな使い方にはなりますが、アナログのワークフローを取り入れられる機構ですね!
インサートとセンド数
オーディオトラックは、インサート数6スロット、センドは4スロット。
インストゥルメントトラックだと、インサート4スロット。
Apolloラック背面のLINEやヘッドフォンアウトから送る、キューセンドが4つ。(接続されているApolloインターフェースによる)
ちなみにProToolsだと、最大でインサート10スロット、センドも10スロット。

これだけあれば十分という意見もあると思いますが、スロットはもっと多いに越したことはないんじゃないか?と感じています。
例として、ラウドロック的なスネアを作る際の個人的プラグインチェインとして
- UAD-2 Studer A800(柔らかなざらつきとコンプ感を加える)
- UAD-2 Chandler Limited Curve Bender(ミッドの渇いた張り出しを作る)
- UAD-2 API VISION Channel Strip(550EQ、基本的な音を作る)
- Avid Channel Strip(周波数ピークや耳障りな帯域を高いQでカットする)
- Waves Manny Maroquin Distotion(エッジを柔らかく、太くする)
- Waves Renaissance DeEsser(4kあたりを削る)
というのがありますが、音作りの段階でインサートを使い切ってしまいます。
これが、レコーディングスタジオで行うプロのセッションであれば、楽器やアナログのアウトボードで音を作れますが、我々宅録ユーザーはそうはいきません。
ソフトウェア音源にもエフェクトは付属していたりしますが、せっかくApolloを使うのならばUAD-2で音を作りたいと思うのが心情では?
となると、加えてミックスで微調整したい事が出てきた際にスロットが足りなくなります。
やりくりと工夫次第ではありますが、Apollo SatelliteなどでDSPパワーを強化している方もいらっしゃると思うので、スロットを増やすくらい出来るのでは?と思ったりしました。
安定性
最も大事な部分。まだ歴史が浅いDAWではありますが、プレイバック、レック、ミックスいずれも安定感は高いです。
Hook Upに掲載のFAQによると、ApolloインターフェースのDSPが使われるのはUAD-2プラグイン処理くらいで、動作のほとんどはCPUで賄われます。
ProToolsでは、私の環境はM1プロセッサなのでAirでも結構な無茶ができますが、メモリは8GBのためRAM不足警告が頻繁に出ています。
LUNAで同等の警告が出たことはありませんが、下部のシステムインジケーターを見ている限りはまだまだ余裕があるように見えました。

総括

Mac環境が必須で、なおかつThunderbolt接続のApolloインターフェースが必要と、初期投資として安い買い物ではありませんが、アナログ機器の気持ちよさを再現できるUAD-2プラグインが使えるリアルタイムレコーダー、キューセンド含むレコーディングシステムとしての価値はあります。
レイテンシを気にせずトラッキング/キューモニターを作成出来るので、この点は他のDAWと大きく違う点です。
とはいえ、MIxまでのワークフロー的なつながりを考えた時、ProToolsから乗り換えるほどではないかなというのが今回の感想です。
やはり生音でのレコーディングとミックスを主軸に置いている印象があるので、DTMとして作曲やトラックメイクのしやすさを重視する方には使いづらいかもしれませんね。